良きホストであること

ヴィトラ ショートストーリー

チャールズ&レイ・イームズは、デザインと建築に対して常に真剣でした。それがビジネスであろうとプライベートであろうと関係ありません。食事の際のテーブルセッティングについても同様でした。

「良きホストであること」は、イームズ夫妻の暮らしと人生の中心でした。椅子をデザインする過程でも、展覧会の企画においても、イームズオフィス901で訪問者を迎えるときでも、自邸である「イームズ ハウス」のディナーを楽しむときでも、ゲストの要望を先に汲み取り、最良のおもてなしをするホストであることを大切にしていました。
「デザイナーの役割は、ゲストの要望を先に汲み取り、最良のおもてなしをする思慮深いホストであることです。」
チャールズ・イームズ
チャールズ&レイ・イームズの孫であるルシア・アトウッドは定期的にイームズハウスやイームズオフィス901にいる祖父母を訪問していました。彼女はその時の思い出をこう語ります。

「イームズオフィス901では、少なくとも週に2回は、外の芝生の上で昼食をとりました。チャールズとレイがランチによく作ってくれたのは、スープ、鶏の胸肉や魚、オイルとヴィネガーで味付けした日本のキュウリ入りの新鮮なグリーンサラダ。あればクレソンも添えて。1970年代のことです。」

「バターには小さな花が飾られています。ドイツのライ麦パンや、現在は閉店してしまいましたがメインストリートにあったブーランジェリーのフランスパンがいつも焼きたてで並びました。コーヒー、マルティネリのリンゴジュース。フレッシュな果物がいつも食卓に並びました。山で摘んだ小さなブルーベリー、ラズベリー、イチゴなどが多かったですね。」

「サクサクのクッキーは、プレーンとチョコレート両方。たくさんの種類のサンドイッチにピクルス、オリーブ、クレソンなどをお好みで選んで。キッチンでは、粉砂糖をふりかけたリング状のバントケーキや、ドイツのジンジャーブレッド風クッキーが焼かれることもありました。休日の前や後には、イタリアのパネットーネが食卓に並ぶことも。かつてイームズオフィスで働いていた友人のアネット・デル・ゾッポの差し入れです。特別な日、とりわけ夜の外出後には、ウィル・ライトパーラーのアイスクリームやシャーベットが提供されました。」
「イームズオフィスにとって『食』を非常に大切にしていました。チーズ、パン、クロワッサン、クッキー、野菜、果物などの素敵な専門店や専門の職人を見つけることにも積極的でした。そのため、フィルムを預けたり、物資を調達するついでに必ず食料品店にも立ち寄るのが常でした。」

「特にレイ・イームズが作り上げるテーブルセッティングは、花、色とりどりの皿、鮮やかな模様のテーブルクロスやナプキンがあしらわれ、まるで描きたての芸術作品のようでした。」
ルシア・アトウッドはこう続けます。「チャールズとレイの食卓はいつも美味しく、花やハーブで美しく盛り付けられ、とても楽しかったです!レイと私は、チョコレートが大好きで、ダンスパフォーマンス後のクッキーやケーキ、キャンディなどのように、私たちのデザートにはチョコレートが用意されました」
現在イームズ財団によって当時の状態のまま保存、管理されているイームズハウスには、O. and A.Hessによる料理本“Viennese Cooking”があります。この本には、チャールズとレイが頻繁に使用したレシピが多数掲載されています。

イームズ夫妻のお気に入りのひとつは、 「ショコラーデントルテ(Schokoladentorte)」というチョコレートケーキのレシピで、レイ・イームズによるメモが書き込まれていました。この本は、チャールズ・イームズとレイ・イームズが長年に渡り、国や文化を越えて収集した膨大な収集物のコラージュのひとつであり、世界の文化に対する彼らの深い関心を表しています。
“Take your pleasure seriously”「喜びを真剣に味わおう」:チャールズ&レイ・イームズの有名な言葉は、彼らのライフスタイルを見事に表現しています。朝食、ランチ、ディナーはゲストの望むことを先読みし、さまざまな種類の食事を用意したため、豊富な選択肢の中には、好みやアレルギーに関わらず、誰でも美味しく食べることができるものがありました。一方、その裏の準備には真剣に労力を傾けました。
素敵な思い出と写真を提供してくれたイームズオフィスとイームズファミリーに感謝を込めて。

Publication date: 3.10.2019
Author: Stine Liv Buur
Images: © Eames Office, LLC

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