Khudi Bari

Marina Tabassum, 2024

バングラデシュでは、世界的な気候変動の影響で洪水の被害が頻発するようになり、多くの人々が新たな住まいを探すことを余儀なくされています。このような状況を背景として、バングラデシュの建築家 マリーナ・タバスムと彼女のチームは、一般の住民が自身で建てることができ、解体・輸送・再組み立てが可能な低コストの小さな家「クディ バリ」を開発しました。2024年、この「クディ バリ」がドイツ、ヴァイル・アム・ラインにある「ヴィトラ キャンパス」に、悪化する環境問題に対する建築的な解決策の一例として新たに建設されました。

「クディ バリ」はヒンディー語で「小さな家」を意味します。非常に低コストかつ軽量な構造のため、電気や機械を使わずに人の手で組み立て、解体することができます。地域団体や救援団体と協力して「クディ バリ」を建て、貧しい人や社会的に弱い立場にある人々の生命と最低限度の生活を守る活動をしてきました。既に設置数は100 戸を超え、これからさらに建設が予定されています。

今回、ヨーロッパのライン川のほとりに「クディ バリ」を設置した目的は何でしょうか?ヴィトラキャンパスは、家具メーカーであるヴィトラの生産拠点でありながらも、実験的かつ文化的価値のある建築や建築やデザインにまつわるプログラムを目的に、毎年数十万人が訪れます。2023年に建てられた田根 剛による「Tane Garden House (ガーデン ハウス)」、「宮脇法」によって再生を試みている緑化区域と合わせて、「クディ バリ」は、ヴィトラキャンパスが進もうとする新たな方向性を表現しています。進行し続ける世界的な気候変動に対しては革新的なソリューションが必要であり、同時に、ヴィトラがこだわり続けるのはデザインとしても優れているということです。必然的な用途に応える建築は、デザイン的、美的にも魅力的であるべきというメッセージが込められています。

Publication date: 13.6.2024
Images: Julien Lanoo