Catwalk: The Art of the Fashion Show
ランウェイを彩るサウンド

ファッションショーは、観客を魅了する演出のひとつのメディアであり、同時に社会的なスタイルを方向づける場でもあります。わずか15分ほどのファッションショーでありながら、その映像は瞬く間に世界中へ広がっていきます。「ヴィトラ デザイン ミュージアム」では、展覧会「 Catwalk: The Art of the Fashion Show」を通して、このファッションショーという現象に迫ります。キュレーターのヨヘン・アイゼンブランドとカタリーナ・クラウチクは、30年以上にわたり音楽のスーパーバイザーとして国際的なファッションシーンのサウンドを形づくってきたミシェル・ゴベールに話を聞きました。シャネル、ディオール、ヴァレンティノ、ロエベなど、ほぼすべての主要メゾンのランウェイで音の演出を手がけてきたゴベールは、音がいかに空間の雰囲気を生み出し、感情を喚起する力をもつか、その音に対する鋭い感覚を持ち合わせています。本インタビューでは、元DJでもある彼が、キューバ音楽を用いたショーや、政治的なメッセージ性を帯びたファッションショーなど、印象的な出来事を振り返ります。
ファッションショーの音楽に興味をもったきっかけは?
幼いころ、フランスのテレビで『Dim Dam Dom』というすばらしいファッション番組がありました。私はそれを見て育ちました。日曜日に必ず楽しみにしていた、“驚き”をくれる番組でした。多くのアーティストが関わっていて、ロミー・シュナイダーやカトリーヌ・ドヌーヴがクチュールコレクションを紹介することもあり、映像もとても美しく撮られていました。音楽も非常に印象的で、いつも興味深く見ていました。
ファッションショーの世界で最も重要な変化は何でしょうか?
最大の変化は――それが良いことかどうかは別として――ファッションショーが瞬時に世界中で見られるようになったことです。たとえばプラダが日曜の正午にショーを行えば、午後1時には世界中がその内容を知っています。すべてが解剖するかのように分析されるんです。刺激的ではありますが、一方で魔法のような魅力は失われてしまいます。店頭に並ぶ頃には、すでに服に対して飽きてしまっていることもある。まるでUber Eatsのようなものです。待つことなく、欲しいものをすぐに手に入れてしまう。
幼いころ、フランスのテレビで『Dim Dam Dom』というすばらしいファッション番組がありました。私はそれを見て育ちました。日曜日に必ず楽しみにしていた、“驚き”をくれる番組でした。多くのアーティストが関わっていて、ロミー・シュナイダーやカトリーヌ・ドヌーヴがクチュールコレクションを紹介することもあり、映像もとても美しく撮られていました。音楽も非常に印象的で、いつも興味深く見ていました。
ファッションショーの世界で最も重要な変化は何でしょうか?
最大の変化は――それが良いことかどうかは別として――ファッションショーが瞬時に世界中で見られるようになったことです。たとえばプラダが日曜の正午にショーを行えば、午後1時には世界中がその内容を知っています。すべてが解剖するかのように分析されるんです。刺激的ではありますが、一方で魔法のような魅力は失われてしまいます。店頭に並ぶ頃には、すでに服に対して飽きてしまっていることもある。まるでUber Eatsのようなものです。待つことなく、欲しいものをすぐに手に入れてしまう。


モンクレールのためにサイレントなショーを手がけたそうですね。どのようなものでしたか?
それは昨年、屋外で行いました。動物や近隣への配慮から、大きな音楽を流すことができなかったんです。そこでサイレントディスコの形式を採用しました。来場者は全員ヘッドフォンを着け、モデルは静寂の中を歩きました。音楽はクラシック映画からインスピレーションを得たもので、最後に流れたのは「Inside the Silence」という楽曲でした。
音楽はファッションにどのような役割を加えるのでしょうか?
ショーにもうひとつのレイヤーを与えてくれます。音楽は言語のようなもので、感情を伝える手段です。まるで映画のように、場の雰囲気をつくり出します。デザイナーはしばしば一曲の音楽から発想を始めます。たとえばニナ・リッチ時代のオリヴィエ・ティスケンスは、「このショーはザ・キュアーの“Pornography”がすべてだ」と語っていました。ですから、私たちはその楽曲を軸にすべてを組み立てていきました。それが私の仕事です――ショーにふさわしい形へと、音を設計していくことです。
それは昨年、屋外で行いました。動物や近隣への配慮から、大きな音楽を流すことができなかったんです。そこでサイレントディスコの形式を採用しました。来場者は全員ヘッドフォンを着け、モデルは静寂の中を歩きました。音楽はクラシック映画からインスピレーションを得たもので、最後に流れたのは「Inside the Silence」という楽曲でした。
音楽はファッションにどのような役割を加えるのでしょうか?
ショーにもうひとつのレイヤーを与えてくれます。音楽は言語のようなもので、感情を伝える手段です。まるで映画のように、場の雰囲気をつくり出します。デザイナーはしばしば一曲の音楽から発想を始めます。たとえばニナ・リッチ時代のオリヴィエ・ティスケンスは、「このショーはザ・キュアーの“Pornography”がすべてだ」と語っていました。ですから、私たちはその楽曲を軸にすべてを組み立てていきました。それが私の仕事です――ショーにふさわしい形へと、音を設計していくことです。
音楽はひとつの言語であり、感情を伝える手段でもある。目に見えるものに、もう一層の深みを加えてくれる。
特に印象に残っているファッションショーはありますか?
2018年、ニューヨークで行われたラフ・シモンズによるカルバン・クラインの秋冬のショーですね。納屋のようなセットにポップコーンが敷き詰められ、壁にはアンディ・ウォーホルのプリントが飾られていました。音楽はデヴィッド・リンチ的な雰囲気でした。それから、2016年にキューバで開催されたシャネルのクルーズショー。すべて生演奏でした。キューバのミュージシャンと仕事ができたのは本当に素晴らしい経験でしたし、最後には全員がランウェイで踊ったんです。そして最近では、パリでのウィリー・チャバリアのショーですね。非常に政治的なメッセージ性の強いものでした。トランプに対して批判的な発言をしたマリアン・エドガー・バディ司教の説教を流したのですが、とても力強いものでした。
2018年、ニューヨークで行われたラフ・シモンズによるカルバン・クラインの秋冬のショーですね。納屋のようなセットにポップコーンが敷き詰められ、壁にはアンディ・ウォーホルのプリントが飾られていました。音楽はデヴィッド・リンチ的な雰囲気でした。それから、2016年にキューバで開催されたシャネルのクルーズショー。すべて生演奏でした。キューバのミュージシャンと仕事ができたのは本当に素晴らしい経験でしたし、最後には全員がランウェイで踊ったんです。そして最近では、パリでのウィリー・チャバリアのショーですね。非常に政治的なメッセージ性の強いものでした。トランプに対して批判的な発言をしたマリアン・エドガー・バディ司教の説教を流したのですが、とても力強いものでした。
テクノロジーはあなたの仕事をどのように変えましたか?また、変わらないものは何でしょうか?
レコードから始まり、その後カセット、オープンリール、ミニディスク、CD、そして今ではUSBと、さまざまなメディアを使ってきました。本当に重要なのはコンセプトです。ツールは変わっても、直感は変わらない。それに、すべてアーカイブしていますよ――コンピューター5台分にもなります。そうしないと音楽は失われてしまうんです。特にオンラインでは、権利の関係でオリジナルの音源が差し替えられてしまうこともあるので。
レコードから始まり、その後カセット、オープンリール、ミニディスク、CD、そして今ではUSBと、さまざまなメディアを使ってきました。本当に重要なのはコンセプトです。ツールは変わっても、直感は変わらない。それに、すべてアーカイブしていますよ――コンピューター5台分にもなります。そうしないと音楽は失われてしまうんです。特にオンラインでは、権利の関係でオリジナルの音源が差し替えられてしまうこともあるので。
展覧会「Catwalk: The Art of the Fashion Show 」は「ヴィトラ デザイン ミュージアム」にて2026年2月15日まで開催されています。本展にあわせて、ファッションショーをAからZまで網羅するかたちで構成された、豊富なビジュアルを収録した展覧会図録も刊行されています。モデルのマウゴジャータ・ベラ、サウンドスーパーバイザーのミシェル・ゴベール、バイヤーのアンドレアス・ムルクディスに加え、キャロライン・エヴァンス、キャシー・ホリン、ヴァレリー・スティールといった専門家たちが寄稿しています。
Publication date: 21.10.2025
Images: 1. Key Visual ‘Catwalk: The Art of the Fashion Show’ © Vitra Design Museum, Graphic design: Haller Brun based on © Bureau Betak, photo: Marie Laure Dutel, Yves Saint Laurent, Autumn/Winter 2020; 2. Prada, Ready-to-Wear S/S 2021, Milan © Prada; 3. Michel Gaubert in his apartment, Paris, 2016 © Rudy Waks / modds; 4. Calvin Klein, Fashion Show, Fall/Winter 2018 © Jonas Gustavsson; 5. CHANEL, Cruise Fashion Show, 2016/17 © CHANEL; 6., 7. Willy Chavarria, Fashion Show, Spring/Summer 2026 © collective_parade, photo: Luca Tombolini; 8., 9., 10. Installation view ‘Catwalk: The Art of the Fashion Show’ © Vitra Design Museum, photo: Bernhard Strauss









