「イームズ ハウス」の茶会

イームズ夫妻と日本のつながり

チャールズ・イームズとレイ・イームズは、人や文化、伝統、そして多様な暮らしや創造性の在り方に尽きることのない好奇心を抱いていました。カリフォルニアのパシフィック・パリセーズにある自邸は、仕事の場であると同時に、芸術と遊びの場でもあり、友人たちとの文化的な交流が自然に交差する舞台でもありました。あるとき、「イームズ ハウス」で、日本の茶会が開かれました。日本の茶会は、ただのティーパーティーではなく、静けさの中に流れる豊かな時間を楽しみ味わうものです。異なる文化にオープンで、かつ新たな学びを楽しむ姿勢を持ち続けたイームズ夫妻は、日本の美意識に対しても深く心を惹かれていたことが分かります。

1951年のある日、チャールズとレイ・イームズの家では、ひとつの特別な時間が流れていました。その日、彼らは日本の伝統的な茶会を開きました。茶席を導いたのは茶人の松本宗世。親しい友人である彫刻家イサム・ノグチと、女優の山口淑子(ヨシコ・“シャーリー”・ヤマグチ)の結婚を祝うために設けられたひとときでした。会場には、チャーリー・チャップリンや前衛詩人のアイリス・トゥリー、俳優のフォード・レイニーといった、多彩な顔ぶれが集います。低く設えられたイームズ・デザインの「 オケージョナルテーブル LTR」には、日本茶が静かに置かれ、リビングルームにはノグチがデザインした照明「 アカリ」のやわらかな光が満ちています。東西の文化が自然に溶け合うその光景は、イームズ夫妻の暮らしそのものを映し出すかのように、穏やかであたたかな時間を感じさせます。
その日の写真に写っているのは、特別なひとときのためにしつらえられた、「イームズ ハウス」の静かな風景。広いリビングルームには、ガラス張りのコーナーのそばにいくつかの畳と「オケージョナル テーブル LTR」、そして「アカリ」の光が控えめに配置され、空間はミニマルな趣へと変わっていました。そこには、イームズ夫妻の日本の美意識へのまなざしがさりげなく表れています。
当時、チャールズとレイ・イームズはまだ日本を訪れたことがありませんでしたが、すでにその影響は住まいの随所に息づいていました。ノグチをはじめとする日本のアーティストとの交流も、その結びつきをより深めていきます。1950年に剣持勇と出会い、1955年には猪熊弦一郎がこの家を訪問。さらに茶会が開かれた年には、裏千家十五代家元の千玄室も訪れています。こうした出会いの積み重ねが、ふたりの日本文化への関心を育み、その後の日本への旅へとつながっていきました。
何事にもオープンな姿勢は、チャールズとレイ・イームズの本質そのものでした。ふたりは、人や文化、伝統、そして多様な暮らしのかたちに対して、尽きることのない好奇心を抱いていました。食事の準備の仕方やテーブルのしつらえ、伝統的な所作にいたるまで、日常のささやかな営みひとつひとつを、学びの機会として大切に受け止めていたのです。小さな出来事にも創造の種は宿る、そう信じていたふたりは、異なる文化に向き合うときも、外から眺めるのではなく、知人から学ぼうとする生徒のようなまなざしで飛び込み、その中に身を置きました。尽きることのない好奇心と、自由でしなやかな感性が、彼らの想像力を育み、い世界とつながり続ける仕事へと結びついていったのです。
「イームズ ハウス」そのものにも、日本建築に通じる要素が多く見られます。スチールとガラスで構成されたフレームは、内と外をゆるやかにつなぎ、日本の住まいに見られる開放性を思わせます。住居とスタジオのあいだ、そして南側に設けられたふたつの中庭は、モジュールに基づいたグリッドで構成され、芝生やレンガ、木材が控えめな植栽とともに静かに組み合わされています。日本庭園のように、素材の質感やコントラストが丁寧に引き立てられた設計です。南側の中庭には、小さな盆栽がひとつ、赤いレンガを背景にさりげなく佇んでいます。控えめでありながら印象的なその光景は、現在も変わらずに見ることができます。

イームズ夫妻自身も、自らの住まいと日本建築とのあいだに共通点を見出していました。1951年の手紙の中でチャールズは、伝統的な日本建築が素朴な素材で構成されながらも、日本人の暮らしやスケールに驚くほど調和していることに触れています。そして「イームズ ハウス」にもまた、同じようなこだわりが息づいていると語っています。「この家が日本の茶室と最も重要な点で共通しているのは、きわめて控えめな素材を、自然で無理のないかたちで用いていることだ」と。さらに、自邸のむき出しのI型鋼やスチールの格子は、構造を見せる茶室の木の梁と同じ役割を果たしていることにも言及しています。そうしてふり返ると、1951年に開かれたあの茶会は、単なる集いではなく、「イームズ ハウス」の建築、東洋西洋をまたぐ友情、暮らし辺の尽きることのない好奇心、そして日本文化への関心が静かに重なり合う、象徴的なひとときだったのかもしれません。

Veröffentlichungsdatum: 13.11.2025
Author: Stine Liv Buur
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