循環型という考え方

ヴィトラのサーキュラリティ責任者 ロルフ・ケラーとの対話

「Circle for Contract(コントラクト向け循環型プログラム)」 は、ヴィトラが使用済みのヴィトラ製家具を買い取り、メンテナンス・再生を行ったうえで再販売する取り組みの名称です。本インタビューでは、ヴィトラのサーキュラリティ責任者であるロルフ・ケラーが、ジュディス・ジェンナーとの対話を通して、この取り組みがどのようにCO₂排出量の削減やコスト低減につながり、比較的良好な状態で使用されてきた名作家具に新たな命を吹き込むのかを語っています。

ヴィトラでは、循環型モデル「Vitra Circle(ヴィトラ サークル)」を通じて、使用済みのヴィトラ製家具の再生に5年以上取り組んでいますね。このアイデアはどのように生まれたのでしょうか。ヴィトラの環境に関する取り組みを記したVitra’s environmental missionは、2030年までに「ネットポジティブ」を達成するという目標や、製品の製造過程の完全な透明化を掲げていますが、それだけに留まりません。私たちはさらに、サーキュラーエコノミーに向けて意欲的な目標を掲げています。2030年までに、すべての製品がそのライフサイクル全体を通じて適切に扱われ、できる限り長く使い続けられる状態を実現したいと考えています。このビジョンから生まれたのが「ヴィトラ サークル」 と名付けたプラットフォームです。この取り組みは2018年、個人顧客、B2C向けの店舗の 「サークル ストア」からスタートしました。その後、現在では法人向け市場のコントラクトでも展開しています。取り扱う製品は基本的に同じですが、コントラクト市場では、その規模がはるかに大きくなります。ビジネスの観点からも、環境の観点からも、一度使われた製品が再び販売され別の用途や空間で使われることには大きな意義があります。
詳しくは、どのような流れになっているのですか?
第一の柱は「再生製品」。使用済みの家具を買い取り、専門的にメンテナンスしたうえで、新たに再販売します。第二の柱は「再生サービス」。お客様の製品を再整備し、新品同様のコンディションへと回復させてから、お客様に返却し、使い続けてもらいます。第三の柱は「回収サービス」。法人市場で再活用可能な製品をお客様から買い取って回収し、メンテナンスをして再生、再流通に繋げます。
顧客にとってのメリットは何でしょうか?
私たちの取り組みは、単なる再生家具ではありません。そこには、製品の寿命を最大限に引き延ばすという、ヴィトラのサステナビリティに対する明確な意思が込められています。つまり、再生であったとしても、お客様が手にするのは、正真正銘のヴィトラ製品であり、オリジナル製品です。すべての製品は、厳格な社内基準と品質基準に基づき、正規部品のみを用いて補修と再整備をされます。入荷時と組立後、それぞれ2段階の品質チェックを経てはじめて、新たな価値を宿した製品として再び送り出されます。さらに、新品と同等の保証がつくことで、その品質と信頼性が裏付けられます。さらに、このような再生製品は、長年の信頼関係に基づく販売パートナーを通してのみ、お客様にお戻ししています。法人のお客様にとっては、これまでと変わらない窓口でプロジェクトを進めることができる安心感も、メリットの一つです。また、再生製品と新品を組み合わせることで、より柔軟なフロアプランニングが可能になります。たとえば、300脚のチェアが必要なプロジェクトでも、再生品が250脚であれば、残りを新品で補うことができる。その自由度は、フロアプランニングに新たな可能性をもたらします。そして今、再生家具は単なる代替手段ではなく、意識的なデザインの選択として選ばれています。時間を重ねた家具が持つ表情と、新たに与えられた価値。その両方を取り入れることが、これからの空間づくりのひとつのあり方になりつつあります。

再生製品と新品は見分けることができるのでしょうか?
再生されたオフィスチェアは、見た目もほぼ新品同様に仕上げられます。一方で、経年による風合いなどのパティナをそのまま残す仕上げにも対応しています。私たちは多くの場合、注文を受けてから再生を行うため、張り地の変更などのカスタマイズが可能です。例えば、グリーンのシートをライトグレーに張り替えるなども承っています。アルミニウムの部品に対しても、磨いて新たな輝きを与えるか、あえてその風合いを残すかを選ぶことができます。こうした豊富な選択肢により、空間に合わせた多様な表情を実現できます。

それらのプロセスにはどのくらいの時間がかかりますか?
多くの場合、新品を導入するよりも短期間で対応が可能です。再生製品のほとんどは、約1週間で用意できます。一方で、より大がかりな再整備が必要な場合――例えば、オフィスチェアの張り地やガススプリング、キャスターの交換、あるいはアームレストの修理などを行う場合でも、1カ月ほどで対応できます。

適していない製品などはありますか?
回収の対象は、ヴィトラ製品に限られます。特にチェア類は、クラシックな名作デザインからオフィスチェア、カンファレンスチェア、「アルコーブ ソファ」など大多数が含まれ、カンファレンステーブルも定期的に回収しています。一方で、デジタル化やペーパーレス化が進んだことにより、ワゴンやトレーなど一部の製品は、直近ではやや用途が限定されつつあります。そのため、これらの製品は対象外にしています。さらに、もう一つの重要な条件として、該当製品の交換用部品が現在も入手可能であることが挙げられます。

再生家具は、どのようなプロジェクトで活用されていますか?
対応するプロジェクトは多岐にわたります。10から15席程度の小規模なオフィスから、数百席規模の大規模オフィスまで、幅広く導入されています。また、大学等の教育機関、レストランなどでも活用されています。営業提案の中でも積極的に紹介されており、各営業担当者が「ヴィトラのコントラクト向け循環型プログラム」について説明しています。

再生家具を選ぶことは、コスト面でもメリットがあるのでしょうか?
価格はさまざまな要因によって決まります。その製品の人気度や、それに伴う買い取りコスト、仕様の内容、そして適正なコストで新品同様の状態まで再生できるかどうか、などが影響します。総合的に見ると、再生製品は通常、新品の価格よりも約15から25%ほど安価で提供されています。
CO₂削減量はどのように算出されていますか?
新品と比較して、最大で約90%のCO₂削減が見込まれます。製品のカーボンフットプリントの大部分は素材に由来しており、ヴィトラ製品の場合、製品によっては全体の約70から90%以上を占めます。残りは主に輸送や廃棄など、ライフサイクルの他の工程に関連しています。製品の使用期間を延ばし、新しい持ち主のもとで2回目の命を与えることで、新たな製造とそれに伴う資源の消費を抑えることができます。さらに、使われていない家具を保管し続けることは、お客様にとって大きなコスト負担になります。私たちは、再び活用されるべき家具を救い出し、廃棄されることなく新たな価値へとつなげています。

Publication date: 05.08.2025, originally published in baunetz-id
Author: Judith Jenner
Images: © Vitra