インターナショナル ラブ ハート

ヴィトラ ショートストーリー

ミッドセンチュリーを代表するデザイナー、アレキサンダー・ジラード。「ハート」は、グラフィックやテキスタイルなど彼が手掛けるデザインにたびたび登場するモチーフであり、無数のバリエーションが存在します。その中のひとつである「インターナショナル ラブ ハート」は、デザイナーとして、そして一人の人間としてのアレキサンダー・ジラードを映し出すモチーフです。

1961年、ニューヨークのショップTextile & Objectsのためにデザインされたインターナショナルラブハートは、タイポグラフィ、グラフィック、言語に対するアレキサンダー・ジラードのこだわりと情熱、そして何よりも愛の普遍性が表現されています。ストレートで率直、大胆でありながらも、柔らかくロマンティックなモチーフです。感傷や厭世観に浸ることなく、彼はいつでも、平和、愛、互いに認め合うことの大切さをメッセージとして自身の作品に込めていました。あらゆる国の言語の「愛」という言葉から形作られるインターナショナルラブハートは、まさに彼の想いそのものであり、世界に生きる全ての国、民族、言葉が等しく美しいものであることを示しています。

インターナショナルラブハートは、もともとはコットン製やリネン製のクッションのためにデザインされたモチーフのひとつでした。後に、1966年に彼が手掛けた、かの有名なレストランThe Compound (コンパウンド レストラン)の木の壁にも飾らました。ニューメキシコ、サンタフェにある自邸同様に、コンパウンドレストランも地元のためのけして大規模ではないプロジェクトでした。そのため、アレキサンダー・ジラードが手掛けたその他の有名なプロジェクトにみる「ジラードらしい」味わい豊かな装飾と色彩に溢れた数々のオブジェをコラージュしたインテリアとは趣が異なり、コンパウンドレストランの内装はより削ぎ落され地元の暮らしに根付いた温かみのあるものでした。そのため、白い背景に黒の文字で描かれたシンプルなインターナショナルラブハートは、地元のお客さんが食事を楽しむ温かな空間のささやかなアクセントとしてぴったりでした。

1967年、アレキサンダー・ジラードは、文字を使ってモチーフを描くというアイデアをさらに発展させ、終わりなく繰り返される「LOVE」の文字でモチーフを描きました。「ハート」のモチーフの中には、もっとも有名な 「Love Heart (ラブ ハート)」や、アレキサンダー・ジラードのニックネーム「Sabdro(サンドロ)」と妻の「Susan(スーザン)」を組み合わせた、二つの「S」でハートが構成される「Sansusi(サンスーシ)」などがあります。

Publication date: 31.1.19
Author: Aleishall Girard and Stine Liv Buur
Images: © Vitra Design Museum, Girard Studio, LLC

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