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プルーヴェ ハウス
カトリーヌ・プルーヴェへのインタビュー
The Maison Prouvé =「プルーヴェ ハウス」は、20 世紀における建築の在り方を定義づけた住宅建築のひとつです。1954 年、フランスの建築家でありデザイナーのジャン・プルーヴェが家族のために設計したこの家は、自身の工場である「アトリエ ジャン・プルーヴェ」製造の工業部品を用いて建てられました。
プルーヴェハウスは、樹木の茂る小高い丘の中腹に建てられました。その土地は、ジャン・プルーヴェと妻のマドレーヌがフランスのグラン・エスト地方にある故郷の街、ナンシーを見渡せるようにと探して手に入れた場所です。プルーヴェハウスが完成した当時、14 歳であった末娘のカトリーヌ・プルーヴェは、プルーヴェ夫婦、家族、友人、アトリエジャン・プルーヴェの職員や工人が新築の家に賑やかに集った春を懐かしく振り返ります。
カトリーヌ・プルーヴェ: 母は長らく自分の家が欲しいと言っていましたが、その時は突然にやってきました。決まってからはあっという間でしたね。家族、友人、同僚の助けを借りて、私たちの家はわずか数か月で出来上がりました。家の大部分は、父の工場であったアトリエジャン・プルーヴェが製造する「標準的な工業部品の残り物」を使って組み立てられました。私にとっては楽しい思い出でしたが、今思えば、自らの工場を去ったばかりの父にとっては、辛い時期だったと思います。なぜあなたのお父さん、ジャン・プルーヴェは工場を手放すことになったのですか?
1953 年、Aluminium Françaisという会社が父の会社の主要株主になりました。残念なことに、新たな投資会社は、この工場に息づいてきた創造的かつ効率的な方法論に理解がなく、より商業性の高いスタイルを適用するために、上層部と工場や職人を隔絶したいと考えていました。1953 年 6 月、父は、自ら信じ実践してきた方法を継続することができなくなったため、工場の権利を含めたすべてを手放さなくてはなりませんでした。「革新的な事業は集団で起こすもの、けして一人では成し得ない。仕事とは皆で道を切り開いていく冒険であるべきだ」そう語った父に、友人であるル・コルビュジエはこう返したそうです「彼らは君が培った森を切り倒してしまった。残されたもので何とかやるしかないよ。」
自邸を建設している時、すでにアトリエジャン・プルーヴェから離れていたということですか?
「私の夢の家は工場でつくられる」かつて父はそう語り、プレハブ建築の部品を応用した個人住宅の工業化を構想していました。自宅を建設すると同時に、組み立てと解体が可能ないくつかの種類の住宅建築を設計にも取り掛かっていました。
家自体の構造について教えてください
家族にも、それぞれの役目がありました。弟は両親のアメリカンジープを運転し丘の上まで部品や資材を運びました。いとこは壁や天井のパネルを運び、母は作業する仲間たちに飲み物を出しました。そして、私の役目は、ネジやボルトを揃え、現場を整理整頓することでした。週末が終わり学校に登校した私は、友達たちのハイキングや家族旅行など楽しい休日の話に耳を傾ける一方で、私が話せることと言ったら、新居のためにネジやボルトを揃えていたということだけでした。
5月から6 月までのたった3 週間で家の外枠が完成した時点で、母はすぐにでも引っ越したいという感じでしたし、ナンシーの小さなアパートも出なければならず、水道を引く前に私たちは新居に引っ越しました。まだ家の中に間仕切りすらない状態で、最初の夜はただ広々としたひとつの空間で過ごしました。
プルーヴェハウスではどのように暮らしていましたか?
すべての部屋はそれぞれ異なる大きさで、南向きのリビングルームがもっとも広い部屋でした。このリビングを父は「オーベルジュ」と呼びました。家によくゲストを招く社交的な家族だったため、父や私たちにとってこの大きな部屋は不可欠でした。そして、家族が最も多くの時間を過ごしたのもこの部屋でした。父は音楽が好きで、このリビングに設置した大きなスピーカーでよくバッハを聴いていました。大音量にして聴くことを好み、そっとその音量を下げるのは母でした。私はロックンロールを聴きながら、オーベルジュの真ん中の屋根に繋がる柱の周りで踊るのが好きでした。
材料のほとんどはスチールと木材が使用され、わずかにアルミニウムも用いられていました。木製の壁とフレームのないベッドルームの扉、その曲線はまるで船のようです。これらディテールはインテリアを居心地よく柔らかな雰囲気にしてくれました。
父は、リビングルームの奥側の壁に沿って、家自体の鉄骨構造と一体化したシェルフをデザインしました。そのデザインは、湾曲した白い金属製の棚板とブルーの奥壁、木製の部品、ディンプル加工の金属製キャビネットドアを組み合わせたものでした。
父は、リビングルームの奥側の壁に沿って、家自体の鉄骨構造と一体化したシェルフをデザインしました。そのデザインは、湾曲した白い金属製の棚板とブルーの奥壁、木製の部品、ディンプル加工の金属製キャビネットドアを組み合わせたものでした。
リビングルームのキッチンの反対側には、地面に繋がるスペースがあえて残されていました。今、そこに繁っているナツメヤシは、かつて私たちが種をまいたものです。いつの間にか、種が芽吹いたので育てることにしましたが、みるみる大きくなり、何度か剪定を重ねました。今ではすっかりこの家の歴史の一部です。
いつごろまでプルーヴェ自邸に住んでいたのですか?
1984 年、父が亡くなりました。そして母が亡くなった後、子供たちは誰もナンシーの自宅には戻りませんでした。父はナンシーの有名人でしたし、私も兄弟もこの家や街と離れ、独立した暮らしを望んでいました。この家の所有権はナンシー市に売却し、現在は美術館であるMusée des Beaux-Arts の管理のもと、夏の期間には毎週土曜日にガイドツアーが行われています。
この家、プルーヴェハウスが、新たな世代のインスピレーションとして在り続けることをとても嬉しく思っています。
Publication date: 25.08.2022
Author: Stine Liv Buur
Image: 1-2+4-8: 2022, ProLitteris, Zurich, Photo: Dejan Jovanovic; 2: Vitra; 9: Jean Prouvé in the living room of his house in Nancy, France © ADAGP © Centre Pompidou, MNAM-CCI Bibliothèque Kandinsky, Dist. RMN-Grand Palais/Fonds Prouvé; 10: Simone Prouvé, third child of Jean Prouvé reading in front of the house in Nancy, France © ADAGP, © Centre Pompidou, MNAM-CCI Bibliothèque Kandinsky, Dist. RMN-Grand Palais/Fonds Prouvé. Photo : Jean Prouvé; 11-13: Vitra;